どちらも原点は「伝える」
私が一番似ていると感じるのは、「伝える」というところです。
デザインの仕事も芝居も、目指している根本は「伝えること」にあるのではないかと思います。どんなに演じても、どんなにデザインしても、それが分かりにくく伝わらなければ意味がありません。まずは伝わること。そこから「どうすれば伝わるのか?」という思考が派生し、表現の方法や反応を意識しながら、技術を磨いていくというような流れは、どちらにも共通していると思います。
ですから、散々考えて制作したデザインに迷った時には、それまでの思考を一旦クリアにして、「伝える」ということに立ち戻って考えることがあります。
芝居も同じで、時間をかけて稽古を重ね、役を育て、演出を受けてきたはずなのに、本番で緊張して思うように動けなくなることが、たまにあります。そんな時は、今までの稽古や細かなことは一旦手放して、ただ目の前の観客に「伝える」ことだけを意識して演じます。
どちらもずっと一人(芝居では劇団内)で考えをめぐらせていると、偏った表現になっていることがあるので、独りよがりになっていないか?表現している「つもり」になっていないか?ということを他者に見てもらうことが大切です。
そういった点も、両者に共通する要素だと感じています。

芝居の稽古中。中央の黒いスカートの人物が私。
制作 = 制限 + ちょっぴり個性
デザイナーも役者もアーティストではないので、好きなように表現して良いというわけではなく、条件や制限のもとに思考をめぐらせながら制作していき、最後に自分のカラー(個性)をちょこっと足すというイメージがよく似ていると思います。
デザインの仕事で制作する際は、案件ごとのブランディングやコンセプト、現場の方の要望や運用方法、さらにコストや印刷条件を考慮しながら制作が進んでいきます。
芝居を作る際も台本に書かれたセリフやト書きに沿って動き、演出家の意図をくみ取りながら演じる必要があります。加えて、劇場の広さや舞台装置、照明や音響なども影響してきて、動きやタイミングに制約が生まれることも多いのです。
その条件や制限があるからこそ方向性が見えて、アイデアが広がることもあれば、逆に壁のように感じることもあります。その壁をどう乗り越えるかを考える時間が、実は一番面白く、やりがいを感じるところだと思っています。
ゲンバはいつも試行錯誤
複数の案を作り提案し、フィードバックをもらいながら修正していく。その過程もデザインと芝居のよく似ているところだと日々感じています。
芝居の稽古では、役者が演出家に向けて演技プランを提案し、ダメ出し(フィードバック)を受けては修正する、ということを公演直前まで何度も繰り返します。
そこでよく求められるのが「対応力」です。稽古とはいえ、大勢の関係者がいる稽古場では緊張もありますし、突然言われたことをすぐにできるわけがない、と言いたいところですが、できなければできるまでやらされるか、場合によっては即交代。
だからこそ、使えるものはすべて使う。過去の感情や、これまでに体験してきた記憶を必死に引っ張り出し、なんとか芝居にのせようとします。
芝居やデザインの仕事に限ったことではないと思いますが、この「対応力」は永遠のテーマと言っても過言ではないくらい、大事な要素で共通していることだと思います。そして、過去の体験や日々何気なく目にしているものが自分のストックになるということは、どの分野でも同じだと思います。

「星の王子さま」舞台稽古中。王子さま役として試行錯誤を繰り返しました。
「大切なものは、目に見えない」
芝居では、台本に書かれていないものを想像することで、役や台詞に説得力が生まれると言われています。(諸説あり)主に役の背景や物語の前後など、台本に書かれていないところを具体的に想像しながら演技プランに足していきます。
デザインの仕事も同様に、直接デザインに関係しない情報であっても、制作物に関わる背景を知ることで、表現に「こころ」が加わるように感じています。その理解があるかどうかで、仕上がりの印象は変わってくると思います。
さらに、デザインの仕事と芝居には、「無駄がない」という共通点もあります。
芝居の稽古中に、たった一言のセリフを何十回もダメ出しされ、何十回も言い直した結果、結局最初の方に言ったものが採用される、ということもよくあります。では、途中の何十回は、いらなかったかというと、決してそうではなく、その積み重ねがあるからこそ、最終的な説得力につながっているのだと思います。
デザインの仕事も同じように、何案も制作して、それでも決まらず、結果、一周回って「これだ」と思える瞬間が訪れることがあります。そんな時、あぁ、芝居と同じだなと感じます。

最後に -いい時間をつくる感覚-
芝居は、役者だけで成り立つものではありません。舞台なら観客、劇場、照明や音響、その場にあるすべてが合わさって一つの空間が生まれ、同じ時間を共有します。役者はその代表に立ち、観客にいい時間を提供するサービス業だと言われたことがあります。
こうした考え方からすると、多くの人や環境と関わりながら、「いい時間(とき)をつくる」というシマダのコンセプトにも、芝居はとても近いものだと感じます。これからもその感覚を大切にしながら、ものづくりに向き合っていきたいと考えています。

これまで制作してきたホテルのパンフレットや、お酒のラベル、リーフレットなど
編集後記
今回、記事をご執筆いただいたKさんは、表情豊かで「破顔」という言葉がぴったりの笑顔のすてきな方!感情の表現力も芝居からの影響を受けているのかな、と想像しました。
シマダグループのコンセプトブック「Metamorphose」にこんな一節があります。
「仕事にも趣味にも、友人や家族との関係にも、いたるところにある、刺激と揺らぎ。
この刺激と揺らぎが、新たな視点のきっかけになり、自分自身を進化させてくれるのなら、仕事とプライベートをきっちり分ける必要がどこにある。
何でも楽しめる人になろう。
楽しいことに境界線はないのだから。」
編集後記の筆者は、今バレーボールをすることにハマり中。バレーボールはとにかくパスを「つなぐ」スポーツです。誰かがうまくレシーブできなくても、周りのサポートで相手にボールが返れば問題はなし!仕事も同じですよね。人間誰しもミスはあるもの。でも、チームでカバーしあえば結果的に問題はありません!(…と偉そうに言いつつ、一番カバーしてもらっている私です。笑)
お読みいただいているみなさんの中にもKさんの言葉に共感した部分があったのではないでしょうか?
本文中にあった「無駄がない」。まさに、人生にも「無駄がない」のだな!と前向きな気持ちになりました!
Kさん、ご執筆いただき、ありがとうございました~♪
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