働かないのが普通
お母さんをやるのが普通だと思っていた
「高島屋でお弁当売らない?」
幼稚園のママ友のこのひとことが無かったら
もしかしたら山下さんは今でも専業主婦のままだったかもしれません。
当時は結婚したら主婦になるのが当たり前。
乗馬に明け暮れた学生生活を過ごした山下さんは
一度商社に就職しますが、結婚を機に退職し専業主婦を続けていました。
ママ友と一緒なら…という軽い気持ちでお弁当屋さんでのアルバイトを始めてみると
「働くの、なんか良い!と思って。自分で稼いだお金を自分で使えてね。
パートとしてですけど、働くようになりました。」
そのお弁当屋さんが店を畳んだ後も「働きたい」という意志は変わりませんでした。もともと動物好きの山下さん。動物関係の会社でパートを続けていたところ、その会社が訪問マッサージ事業を始めることに。山下さんはそこで介護報酬請求業務に携わるようになります。
「パートだったから毎日同じ仕事をしていて。
特に不満があるわけではなかったんだけど、もっといろんな仕事を任せてほしいのに…と思うようになりました。」
子どもから手が離れ、なんとなく見ていた転職サイト。そこで見つけたグランジュール尾山台は、アクティブシニアと呼ばれる方を対象にしている自由度の高い施設です。
近所にあるし、今までやってきた介護報酬請求業務が生かせるかも。
今度はパートではなく社員として、自分をもっと活用してもらいたい。
そんな思いが通じグランジュール尾山台の社員第一号として働くことになりました。
「だから私には立派なキャリアはないんです。介護技術も営業の才能もない。」
肩をすくめて困ったように笑いながら、
「できることだけでもやろうって。そういうスタンスです。」
24時間365日
自分以外の何かに時間を捧げる力
社員として働くようになった山下さんを待っていたのは
介護報酬請求業務にとどまりませんでした。
「スマホで写真を送りたいんだけど、どうしたらいいの?」
「足腰が弱くなって、段差が不安で」
ちょっとした困りごとや体調の相談から、通院が難しい方のサポート、また介護保険についての勉強会など。世田谷区や近隣の病院とも提携し、ご入居者の安心と愉しみのために奔走する日々。
仕事をしなければ出会えなかったたくさんの人とつながり働けることは、
「何よりプライスレスです」
周りの人に刺激を受け
最近は介護技術を習得しようと初任者研修を受講し、
やったことのなかったInstagramを広報のためにと自らと発案し挑戦を続けています。
https://www.instagram.com/grandjour_oyamadai/
さらには音楽レクリエーションに触発されてギターまで習い始めたそう。
グランジュール尾山台の責任者としてイベント企画や広報、夜間対応など一手に担いながら、近隣施設の調理ヘルプや事務補佐まで、自ら手を上げてこなしています。
さらに、どんなに帰りが遅くなっても休みの日は必ず5時に起きて馬に乗りに行くという鋼の体力の持ち主。きっと忙しいはずなのに、いつでもさらっと澄んだ空気をまとい、まるで何事もなかったかのような佇まい…。
「人間の言葉が通じない馬との競技や、子育てをしていると思い通りにならないのは当たり前なんです。」
自分には立派なキャリアなんてないと言い切る彼女には
どうなろうと受け入れる、しなやかな覚悟がありました。
「馬術と子育てで得たものは24時間365日自分以外の何かに時間を捧げる力(笑)」
馬に乗ってハードルを飛び越えるとき、馬の背中や手綱の力加減など
言葉にならないサインを読み取って馬と心ひとつにしていくかのように
どうしたら皆様が快適に過ごせるか
ご入居者とのちょっとしたやり取りと気配りを積み重ね、
どんなことも受け入れる安心感を作り上げていきます。
グランジュール尾山台に心地の良い空気が流れているのは
きっと、等々力渓谷のマイナスイオンのせいだけではありません。