営業から介護職への転身
「まぁ~大丈夫だろうな~」と思って、自然な流れで介護業界へ転職したという高森さん。え、ちょっと待って。どうしたら、その「大丈夫だろうな~」に行きつくのか?
私のよくない固定観念が邪魔をし、うまく理解できなかった。
「僕の両親はともに耳が聞こえないんです。母は生まれつき、父は後発的に。だから、小さい頃から障がい者施設へ連れて行ってもらったりして。そういう環境には慣れていて、介護業界にも抵抗感なくすんなり入れました」と。予想だにしない回答に少し戸惑って、「もしかして、高森さんは手話できるんですか?」と、なんとも馬鹿馬鹿しい質問をしてしまった。
「簡単なものなら」と、嫌な顔せずいくつかの手話をしてくれた。最近見始めたドラマsilentが私の頭をよぎる。
「僕は嘘をつくのは苦手。口先もうまくない。営業には向いていないんですよ。25歳で結婚した嫁も理学療法士で。この業界へは、いざなわれたんです。」
“いざなわれた”という言葉が妙にしっくり頭に残った。
介護業界は案外楽しく、新しいことだらけ
転職する際に、介護職員初任者研修を受け介護の基本を学んだ。そして、転職先で、尊敬できる人に出会った。今もその人の介護に対する考え方は彼に大きな影響を与えている。「看取り介護」についても、「入居者第一」についてもその人に学んだ。教わったことで、一番大切にしているのは、自分が大丈夫な状態であること、自分を大切にすることだという。そうじゃないと、よいケアなんてできっこない。
「営業では、なんだか自分に嘘をついていた気がしたけれど、介護職になってからは自分に正直に生きられている。それは、とても楽しいこと。」きつい、汚い、給与安いって言われてしまう業界だけれど、僕にとっては新しいことだけの楽しい世界なんです。
介護を人気ナンバーワンの職業にしたい
シマダリビングパートナーズに入社したきっかけを聞くと、迷いなく返ってきたのは、「介護を人気ナンバーワンの職業にしたいんです」という言葉だった。
老健で働いていた時、現状を変えようと思ったことが何度もあって、でも、組織の中で何かを変えることはなかなか叶わなく、すごく悔しい想いをしたんです。そんな時に、この会社を見つけ、「あっ、ここでなら変えられるかも。」って。
何が彼をそう思わせたのか?
それは、介護事業従事者らしからぬ雰囲気の女性面接官の影響が大きいという。
その人は、当時エリアマネージャーの鎌田さん。高森さんと同じく、「介護を人気ナンバーワンの職業にしたい」と、常々言っている女性。そんな彼女と運命的な出会いをし、実際に入社してみてさらに驚いたという。
「入居者さまの自由にできる環境を整える」という会社の姿勢がそこにあったから。
例えば、入れ歯を外して食べれば、窒息の危険がある、そのリスクを考えるなら、否が応でも入れ歯をつけさせたいところ。ただ、ここでは入居者さまの意思が尊重される。入れ歯をつけたくないなら、つけなくてもいい。もしかしたら、入れ歯があっていなくて、不快なのかもしれない。常に、入居者様に寄り添うことの方が、リスクをとることよりも大切なんだという姿勢がある。それは、一般的な介護施設の考え方とは大きく異なるのだという。
インタビュー中に後ろを歩く入居者さんが向かったのは、中庭の喫煙所。
介護施設で喫煙がOKなところは少数派だときく。
なんでもかんでもOKではないのだろうが、一人一人の生活や生き方が丁寧に尊重されているということを目の当たりにした気がした。
広がる夢
いつ会っても笑顔で、和やかな高森さんに「大変なコトってないんですか?」と素朴な疑問を投げかけてみた。「う~ん。本当に楽しいんですよ~。みんなにいろんな相談をしてもらい、解決できたら嬉しいし。恥ずかしいけれど、頼られたいんです。」
「唯一、大変と言えば、施設長業務を学ぶ時間が足りないのが大変なことかな・・・」
なんとも、前向きな答えが返ってきた。
入社1年半の高森さん。近い将来にきっと施設長になっているだろう。
インタビュー中にわかったのは、本当に誠実で、嘘がつけないという性格。
プライベートでは最近、先輩から誘われサウナに行ってすっかりはまってしまったそう。時間がある時は、テントサウナを用い、皆で川辺まで行ってアウトドアサウナ。
何にも考えないで、虫の声や水の音に耳を傾けて、ぼ~っとするのがいいんです、と。
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「ごっこランドというアプリ、知っていますか?」彼がスマートフォンを差し出してきた。
初めて見るそのアプリは、子供向け職業疑似体験型の知育ゲーム、オンライン上のキッザニア?とでもいうべきものらしい。
画面には見たことのある企業のロゴばかりがずらりと並んでいる。
「ここに、シマダリビングパートナーズを出したいんです!」
その夢が現実となる日はきっと近い、と確信した。