2024.10.25

石垣島のアートシーンを盛り上げる
15周年を迎えたホテルククルより気迫と情熱の現地レポート!

石垣島ホテルククルの開業15周年を祝して、今年はアートイベントYEAR! 現地のディレクターを務める冨村智憲がイベントレポートをお届けいたします。

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15周年を迎えたホテルククルより気迫と情熱の現地レポート!
Summary
  1. はじめに
  2. 蔵元 SAKE & GALLERYの真骨頂
  3. ナガサワユウキによる圧巻のパフォーマンス
  4. 命ある絵〜長嶋里沙~
  5. 蔵元の象徴、アートウォール
  6. 次回のイベントは

はじめに

陽炎の奥に、砂埃とアスファルトが焦げたような匂い。それは南国特有の突然のスコールが、亜熱帯性の日差しによって焦がされた大地を湿らす匂いだった。7月12日、石垣島ホテルククル開業15周年アートライブイベント「美禄、琉球の宴~MIROKU RYUKYU~(出演:長嶋里沙、ゲスト:ナガサワユウキ(ヴァイオリニスト)」がホテル1階、蔵元 SAKE & GALLERYにて開催された。

 

スコールが止み、昼過ぎにはヴァイオリニストのナガサワユウキも石垣島の地を踏み、全ての役者が揃った。長嶋里沙はアートウォールの下準備も終わらせ、画材(絵の具)の調達も整っていた。

ふと外に目を向けてみる。

 

大通りは石垣港クルーズ岸壁に寄港している大型クルーズ船から下船した外国人観光客でごった返している。まるでどこか極東アジアのストリートに迷い込んだかの様な異文化との融合に惑わされる。今思ば、これから始まる優艶な生命と炎帝の音霊との融合の瞬間を予兆していたかも知れない。

 

蔵元 SAKE & GALLERYの真骨頂

夕刻頃、開演を前に音響や会場レイアウトの最終調整を行っていると、一人の女性がサックスを抱いて会場に現れた。それも突然に。聞くと我らが総合プロデューサーである柏原晋平氏が前夜の美崎町パトロール時に出会ったという女性だった。

彼女は美崎町の一角でストリート演奏をしていたそうで、偶然通りかかった柏原氏が、ナンパお声掛けして今日に至るとのこと。

スタッフへも告げられていなかったゲスト…。今回も何が起こるかわからない、筋書きなしの展開に、胸のドキドキが止まらなかった(いろんな意味で)。

 

彼女の名前は、坂奈々美(さかななみ)。

「ななぱん」と呼ばれ、パン職人の傍らサックスと向き合っていた。楽器の準備が整うと持ち込まれたカラオケを伴奏にサックス演奏が始まる。サックスの音色に引き寄せられるかの様に今回のスペシャルゲストであるヴァイオリニストのナガサワユウキ氏が現れた。

ナガサワユウキによる圧巻のパフォーマンス

音楽に言葉や準備は必要ないと言わんばかり、開演前にも関わらずあれよあれよとライブセッションがスタートした。圧巻だったのがナガサワユウキだ。超絶なテクニックとストリート仕込みの研ぎ澄まされたライブ感覚でサックスの音色を捕まえ、ななぱんをリードしていた。

 

これぞ蔵元 SAKE & GALLERYの風景だ。歴代の画匠達によって重ね綴られたアートウォールを背に、二人のミュージシャンが各々の音霊を重ね合わせていた。そんなライブパフォーマンスを大通りから聴きつけたのか、続々と来場者が増え、急遽、開場時間を早める事に。よし、こうなってくると早く始めないと勿体無い(笑)。

さあ、美禄、琉球の宴の開演だ。

 

 

毎日、ストリート演奏に立つという。鍛え抜かれたライブ感覚は圧巻で、リクエストを募り来場者とのレスポンスを深め虜にする。

時折、笑みを見せながらも体全身で掻き鳴らすヴァイオリンからは例えようのないエキセントリックな熱量を発し、その熱量は蔵元のみならず美崎町を包み込んだ。夜とはいえ、まだまだ冷めやらぬ石垣島の外気に負けていなかった。

命ある絵〜長嶋里沙~

そんな独特な空気感の中、少し清閑な趣で長嶋里沙が現れた。その場の空気を理解していた彼女は即座にナガサワユウキが発するヴァイオリンの凄まじい音圧を受け止め、優艶に筆を走らせ始める。

まさに観る者の魂を揺さぶる、画匠の顔になっていた。漆黒に下塗りされたアートウォールに、輝かしく立体的な彼女の描写が誕生してゆくと、会場の雰囲気に琉球の色彩や歴史が描き足されてゆく。

 

それは沖縄の魔除けの象徴である神獣「シーサー」だった。絵の具を重ね合わせたその立体的な彼女の描写によって、まるで命までもが吹き込まれているかの様な神獣は、今にもアートウォールから襲いかかってきそうな熱苦しい迫力だった。

魔物なんて一獣たりとも寄せつかせないだろう。神獣が命を宿り睨みを効かせた瞬間、冒頭で述べた異文化との融合から予兆された「炎帝の音霊と優艶な生命との融合」が現実の世界となり、終演を迎えた。

蔵元の象徴、アートウォール

蔵元のアートウォールには歴代、様々な画匠たちの息吹が描き込まれているが、今夜は絵だけではなかった。彼(アートウォール)は演奏家が奏でる魂の音霊も体一面で受け止め、浸透させ、進化を果たした。「絵の具」、「音」の次は何を食らうのか、彼の最終形態が楽しみである。

 

終演後、音響機材の撤収作業を続けているとふと気付く。

「このエネルギーが渦巻き熱量を帯びた空気感は何だろう?」

記憶の中へそう投げかけながら探る。

 

そうだ、それはまさに湿気と熱量を纏う南国タイフーンに値するものだった。記憶の中にある台風の暴風音も、熱量勝るナガサワユウキのヴァイオリンの音にかき消されていた。気象庁からまだ正式な発表は無いが、蔵元SAKE&GARELLYから発生したエネルギー「美禄、琉球の宴」は、間違いなく石垣島を襲った今季台風第一号であったことは間違いないだろう。

 

たぶん(笑)。

次回のイベントは

石垣島ホテルククル15周年イベントの一環、画家・さえもり氏による個展が11月1日からスタートします。1日と2日には音楽を掛け合わせたオープニングイベントも。石垣島にお越しの際は、この溢れんばかりの熱気を感じに、ぜひお立ち寄りください。

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