君はイチローを見たか
私には特技がある。
「過去 40 年間のプロ野球選手全員の名前と出身校やドラフト順位及び
その選手のトピックスを言える」というものだ。
どういうことか。
例えば誰もが知っている スーパースター「イチロー」と聞いてもらえば
「愛工大名電高校、オリックスブルーウェーブ、ドラフト 4 位。高校時代の打率は5割を記録。『星野と落合のドラフト戦略 元中日スカウト部長の回顧録』(中田宗男著)によると地元中日ドラゴンズが3位指名を検討していたが、直前で覆ったとされている。シアトルマリナーズ時代に毎日カレーを食べてたのは事実」と答えられる。
NPB(日本野球機構)に所属するプロ野球12 球団の支配下選手は 70 名。
その平均在籍年数は「7.7 年」である。(2021 年調べ)
計算すると 12(球団)×70(人)×40(年)/7.7(平均在籍年数)=4363.6(人)
つまり 4363 人の名前をあげてもらえば瞬時に上記のように答える事ができる。
大事な事なのでもう一度言う。4363 人全員だ。(外国人選手と育成選手除く)
無駄な特技極まりない。
祝い「アレ」!! シマダグループは読売ジャイアンツ球場を応援します | シマダグループ
学生時代この特技を女子の前で披露したところ 1 ミリもウケなかった。
どれくらいかというと
「ヘリコプターって、「ヘリ・コプター」じゃなくて「ヘリコ・プター」らしいよ」「へー」みたいな感じだ。
そら、そうよ
ほとんどの人間が興味を示さないこの無駄特技でも当社にはこの手の話題で盛り上がる集まりがある。それが(非公認)プロ野球同行会だ。参加メンバー老若男女問わず。実際にメンバーは各事業部や役職など関係ない。条件は「野球が好き」ということだけだ。ただし、自然とおっさん率は高いのは言うまでもない。
この会のルールは簡単明瞭だ。
1.仕事の話はしない。野球の話のみ。
2.会費は割り勘。
会合場所は四谷にある「野球居酒屋あぶさん」。店主が「ドカベン」や「あぶさん」でお馴染み、故水島新司先生の草野球チーム・東京メッツでプレーをしていたこのお店は野球ファンの聖地だ。壁一面に選手のユニフォームやサインが飾られている。そこらにあるような軟弱な若者向けのスポーツバーと違い、そのコアな世界に引き込まれる。店員の方もきさくに声をかけてくれるアットホームなお店だ。
そんな野球居酒屋に集まるメンバーは古いプロ野球選手名鑑を手に熱く語る。
・俺は巨人の篠塚が一番好きだった
・最後のPL戦士オリックスの中川ドラフトは7位だ
・小学生の時から揃えていたプロ野球カードがある
・横浜の左の投手で当たったのはランドルフが最後で、今年のケイは久々に当たった
・大山とるなら岡本くれ
・バトルフェイス京田
・おーん
ちなみにここでの私の呼び名は「神」だ。(席も上座)なぜなら私が一番詳しいから。
口さがないメンバーは「(私が)唯一輝ける場所」と言ってくる。
余計なお世話だがその通り。誰にでも輝ける場所があるのはいいことだ。ただ、実際にやる方はたぶん小学校2年生にもかなわないだろう。
第1回選択希望選手
2024年10月26日私は有給休暇を取得した。
有給取得の理由には「大事な会議のため」と記載。
その大事な会議とは、プロ野球ドラフト会議(新人選択会議)である。
未来のスターを夢見る若者達が1枚のクジに翻弄される日だ。
死ぬまでに一度は生で見てみたいと思い、毎年抽選やリセールに挑戦しているのだが、残念ながら一度も当選していない。(倍率30倍程度)当日現地にはいけないが一日中スポーツ新聞を買い漁り、アマチュア球界の雑誌を片手に中継するテレビ局やスポーツアプリ、YouTubeの実況に没頭する。
各球団が誰に入札をしたかで息をのむ。
「おー」「そうかそうか」「え、そうきたか!」「うそだろ!?」「なんと!!」
絶賛発せられる独り言もノンストップだ。
例年、この日は他の話に耳を貸さないので家族も諦めている。
今年の目玉である金丸夢斗選手のクジを贔屓球団が外した時
「あー!!!」と頭を抱え悲鳴をあげると部屋に入って妻が「うるさい」と一言。
それでもアプリで最終指名のソフトバンク育成13位までチェック。1年で最も楽しみなこの日が終わるとしばらくの間、何を楽しみに生きていけばいいかわからない。あと、今年はもう全員の順位と名前まで覚えた。
最近は12月でも楽しみもできた。それが「現役ドラフト」だ。この現役ドラフトの制度は・・・(以下略)
つば九郎のくるりんぱは一度も成功してない
時間があれば球場にも足を運び、東京ドームや神宮球場でビール片手に野球観戦。
試合が終われば近くの居酒屋で反省会。ここでも仕事の話は一切なし。
年齢や役職を越えてオープンでフラットな関係が形成されている。
野球好きの人なら肩肘張らずに誰でも参加できる。ただし、本当に好きじゃないと心底つまらない集まりだ。色々な場所に顔をだすコミュニュケーションモンスターと呼ばれる広報の女性社員も、この同好会への参加は避けているほどだ。
だが、それでいい。
シマダグループは部活動や同好会などきっかけは提供するが、参加は自由、辞めるも自由である。誰も何も強要しない。自分で考え、自分で決めればいいのだから。
自分の居場所は自分で見つける。それはこの会社のスタイルだ。そんな自由な社風に感謝しながら、今日もまた四谷の「野球居酒屋あぶさん」で集う。趣味がもたらす出会いは仕事よりも深い関係を築けることがある。
それぞれの好きなことに身を捧げながら、ささやかな喜びを見つけている。