アフタヌーンティー・・・ですか
「アフタヌーンティー・・・ですか。」
西麻布の得意先での出来事だ。
丁度昼時という事もあり“おすすめのお店はありますか？”と得意先の奥様に話題をふったところ“ホテル＆レジデンス六本木のBar＆Restaurant COCONOMAのアフタヌーンティーが美味しい”と勧められた。
まいったな。。俺はうまい蕎麦屋でもあればと期待して聞いたんだが。。
ここら辺ではアメリカ大統領も来店した「権八」やメンチカツが名物の「三河屋」あたりが有名だ。まさか、アフタヌーンティーなどそんな小洒落たものが出てくるとは思わなかった。そうは言っても得意先のおすすめをそう無碍にすることもできない。
次回お伺いした時に、まだ食っていないなんて話になると面倒だ。
腹もペコちゃんだし寄っていくか。
アフタヌーンティーか。。俺は数年前までアフタヌーンティーの事を洋服のブランドか何かと思っていた。（カルバンクライン的な）知った時は正直愕然とした。歳はとりたくないものだ。
いや、まぁ歳とかの問題じゃないな。
あきらめてホテル＆レジデンス六本木に赴く。西麻布交差点からすぐそこだ。
なんだ、このビルか。随分前この辺を歩いた時の記憶を呼び戻す。大分綺麗になったな。確かバブルで所有者が転々として廃墟みたいな感じだったが、いつの間にこんなに立派になったんだ。
おじさん一人でアフタヌーンティーなんて
エントランスに入るとこれまた品の良いスタッフが迎えてくれる。
なんだかホテルのようなフロントだ。ここは本当に飲食店か？
いかん、店の雰囲気にのまれるな。落ち着いて打つべきボールを見極めるんだ。
「ああ、、すいません。アフタヌーンティーの予約を入れたのですが。」
スタッフはにこやかに案内をしてくれた。こんなおじさんが一人でアフタヌーンティーなんて変に思われていないだろうか。
いやいや、それこそ自意識過剰だ。別に俺の事なんか誰も気にしていないのだから。
普段縁のない洒落た店という事もあり少し卑屈になる。
しかし、お洒落な店だ。バーのカウンターもある。
今度夜に来るのもいいかもしれない。
きたきた。それではアフタヌーンティーとやらをいただいてみるか。
前菜のフライドポテト。
うん、味に仕事がしてある。ファストフードのポテトとは一味違う。
ベーグルにはふんだんな野菜とチキンが盛り込まれている。
酸味がきいていて、意外とイケる。
その後チーズケーキやマカロン、アイスクリームなどがふんだんにテーブルに
並んだ。酒に弱い俺だが、甘いものには目がない。
レモンライムタルト・ココナッツチーズケーキ・ライチブルーハワイジェレ。
どうやら今は夏をイメージしているようだ。
ううむ、疲れた脳に糖分が染み渡る。色合いも鮮やかで見ているだけでも楽しくなる。
アレレ、あっという間に無くなった。知らぬ間に夢中で食べていた。
これで本当に3,500円か？随分レベル高いじゃないか。
合間に紅茶をいただく。色々な種類から選べるようだ。
・Fortnum & Maison Tea 4種類 ロンドンに拠点を置く英国王室御用達ブランド。
・Mighty Leaf Tea 2種類 1996年サンフランシスコ生まれのティーブランド。創業以来ホテルで愛飲されている。
“ふー” 飲み干した後 少し息を吐く。
その瞬間、耳から音が消えた。そういえば紅茶をのんびり飲むなんて久しぶりだな。飲み放題なのも嬉しい。なんだかゆったりとしてホッとする時間だ。普段はコーヒー派だが、たまには紅茶も悪くない。
いいじゃないか こういうのでいいんだよ。こういうので。
どうやら胃袋に新しい歴史が刻まれたようだ。
食べるときは誰にも邪魔されず
周りには海外の方や港区マダムがそれぞれアフタヌーンティーを楽しんでいる。
ああやって複数人で楽しむのが本来の姿なんだろうな。
ここは一人からでも予約ができて助かった。いやいや、人の事など気にするな。
モノを食べるときはね、誰にも邪魔されず、自由でなんというか、救われなきゃあ、ダメなんだ。一人で静かに豊かで・・・。
俺は一人でこころゆくまでアフタヌーンティーを楽しんだ。
“ありがとうございました！” スタッフの笑顔がまぶしい。
店をでて、少し散歩をしながら大江戸線六本木駅を目指し上り坂をあがっていく。
そういえば、この周辺の事を乃木坂っていうんだっけ。。
あの乃木坂なんとかという女の子たちは全員顔が同じに見えるな。
歳はとりたくないものだ。いや、まぁ歳とかの問題じゃないな。
うまいものを食うと何だか幸せな気分になる。
人がひっきりなしに行きかう中、俺は得体のしれない奇妙な満足感を味わっていた。
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