2022.01.30

リノベ物件だからこそかなえられた「ホテルに住まう」
というコンセプト。「ホテル&レジデンス六本木」

「えっ!ほんとに?」と、思わず二度聞きしたくなる。シマダグループのプロジェクトの裏話を、社員の証言から浮き彫りにする「シゴト」。ここでは「ホテルに住まう」をコンセプトに、レストラン、ホテル、サービスアパートメント、レジデンスと、新しいスタイルの複合施設「ホテル&レジデンス六本木」に迫ります。

シマ報 > 不動産事業 > ディベロッパー > リノベ物件だからこそかなえられた「ホテルに住まう」
というコンセプト。「ホテル&レジデンス六本木」
Summary
  1. いわくありげな物件。
  2. 中古というリスクを利点に変えた「発想」。
  3. 「できないと言わない」開業までの狂騒曲。
  4. ホテルに住まう、ということ。

いわくありげな物件。

「まさにファンドバブルの象徴のような物件でした」

 

西麻布の六本木通り沿い、モスグリーンの外壁が印象的な14階建ての建物。「上はマンションなんですけど、6階から下のホテル部分だけを買ってくれないか、という話が来たんです」と言うのは、シマダアセットパートナーズ株式会社代表の佐藤悌章さん。

 

当時は一営業マンだった佐藤さん。そのいかにも「いわくありげ」な物件に、心がざわめきました。

 

「自分も社長も乗り気だったんですけど、ネックだったのが約80室のマンション所有者に、大改修工事の合意ののもと進めなきゃいけない。これは、なかなか大変だろうと」

 

一度は断念したものの、後にやってきた2008年のリーマンショック。このあおりを受け、最後に所有していたオーナーがお手上げ状態に。不動産会社が買って売ってを繰り返し、所有者が9回変わる間に一部屋ずつ買い上げ、最後の所有者は80室中76室所有していた(!)というアクロバティックな展開により、可能性が一気に高まりました。

 

「もちろんリスクはたくさんありました。ただひとつ、うちがが買ってなかったら、今あの建物は残ってないと思います。それは、言い切れる」

 

購入した当時は、築31年でした。「僕らは建物に耳を傾ける、しっかり手を加えてあげれば、価値がある物件。ただ、他の会社なら建替えていたと思います」

以前のホテル&レジデンス六本木の姿

中古というリスクを利点に変えた「発想」。

しかし佐藤さんにその考えは、1ミリもありません。「うちは最初から、建物は生き返らせてあげるっていう企業文化なので。どうすればできるか。そればっかり考えていました」

 

ひとつの光となったのは、この建物で展開したい事業がホテルにマンション、飲食店舗と、シマダグループがこれまで手がけていたものばかりだったこと。「それが全部できるのを、チャンスとして捉えようと」

 

無駄な部分は削ぎ落としつつ、建物としての魅力を増すためにはどうしたらよいか。中古ならではの良さをどう生かすか。考えた末、佐藤さんはたと気づきます。ホテルと住居、入り口が同じであることを。

 

「今は建築基準法で、入口を分けなきゃいけないんです。でもリノベーションなら対象外となる」

 

そしてホテルと住居のフロントが一緒にする。「ホテルに住まう」という軸となるコンセプトが誕生したのです。

「できないと言わない」開業までの狂騒曲。

決まったはいいものの、開業まで時間はまったくありません。工事を急ピッチで進めながら、各部署から担当者が集められ、ホテル、レストランの立ち上げ、すべてを同時に行う必要があります。

 

「ずっと事務所に泊まって、帰れませんでした」支配人の小林武一郎さんは、当時を懐かしむように話します。

 

「とにかく成功させなきゃいけない。間に合わせなきゃいけない。何より、来ていただいたお客様を迎え入れなきゃいけない、そんな使命感がありました」

 

ただ工事ができていないので、ロールプレイングができない。食材も入れられない。ピンチづくしの中、それでも小林さんが周りに言い続けたのは「考えること」。

「周りは『できない』と、即答してくるんです。それでも、諦めない。状況を把握しながら、自分でどうしたらできるかを考えるんです」部署のスタッフ同士をつなげてみると、実はうまく行ったり。「調整役、つなぎ役ですね。これをひたすらやってました」

 

そしていよいよ開業となったものの、まだ着手できていない案件も多くありました。そこで、外から奇跡のように現れた救世主が、山本達さんでした。

 

「自分は過去に広報やマーケティング、教育ビジネスや通訳もやっていたので、隙間隙間を埋めて、居場所を作ってきた感じ。多分接客はもちろん、外部への営業活動や広報、英語通訳にSNS、スタッフ研修にイベント企画などを同時にやってました」

 

後の語り草となっているのは、入社の仕方です。ある日、工事中にレストラン「ココノマ」の壁塗りワークショップが行われ、いろんな部署の社員たちに加え、一般公募で集まった方々が参加していました。下見をして会社の雰囲気をつかみたいと現れたのが山本さん。すでに入社応募はしていたものの、面接もまだという段階でした。「で、お疲れ様会が開かれ、運よく参加でき、関係する社員の皆さんに自分を印象付けることができた」ことで、入社とあいなりました。

 

思えばそのバイタリティと「できないと言わない」マインドこそが、そもそもシマダらしい人材だったと言えるでしょう。

ホテルに住まう、ということ。

さらに考えなければならないのは、ホテルのみならず、住居部分もしかり。「ホテルに住まう」というコンセプトを体現するために。「ホテルとレジデンスのフロントが同じ」というハード面のみならず、ソフト面においても、さまざまな工夫を凝らしました。佐藤さんは言います。

 

「たとえば帰ってくると、ホテルのコンシェルジュから『おかえりなさい』と言われる。それってうれしいし、かっこいいじゃないですか。あとは宅配便を預かってくれたり、カフェのコーヒーチケットがもらえたり。「ホテルに住まう」というコンセプトを、宿泊者だけじゃなくて、住まわれている方にもどう感じてもらうか。それが結果、ホテル自体の色にもつながっていると思います」

 

部屋はキッチン付きのサービスアパートメントゆえ、宿泊者は「住んでいる」感覚を、そしてマンションの入居者は「ホテルにいる」気分を味わわせてくれる。そんなリノベーションゆえの利点を生かし、オンリーワンの施設となったのです。

オープン当時のホテル&レジデンスの外観

Related Articles