理由は「人として」見てくれたから。
「不安だと思うけど、好きを生かせるから」
彼女がずんと心に響いたのは、このひとことでした。
「他の会社の見るところがスコアだったり、キャリアだったりするなかで、ここは“人を見てくれてる”って思ったんです」
会ったとたんパッと感じる、知的で溌剌とした印象ながら、人の心をほどく懐っこさ。
2008年、「シマダハウス」に新卒での入社を果たした瀧口さんは、目をくるりとさせながら、就職した時のことを話してくれました。
「正直、最初はけっこう迷う部分が多くて」
アメリカの大学を卒業後、日本で就職活動をしていた瀧口さん。当然ながら、志望していたのは英語を生かせる会社でした。
しかし当時の「シマダハウス」は、海外に拠点があるわけでもなく、英語を使う部署も仕事もありません。加えて、世はリーマンショックの直後。不動産業界と聞いて不安がもたげるのも、無理はありません。
「だけど、面接でお会いした方の熱量をすごく感じて。自分のストーリーにも興味を持って聞いてくださいましたし、これからは海外の入居者様も増えるし、ホテルもできるし、絶対に出番があるから、と言ってくださって」
実は他社の内定も決まっていたそうですが、最終的には「シマダハウス」を選んだといいます。
「決め手となったのは、人の魅力です」
たとえられるのは、くさい部屋?
そうして入社したはいいものの、不動産のことは右も左も分からないことだらけ。
本人いわく「迷える子羊」の状態でした。にもかかわらず、見る物件や、何かにつけて「これどう思う?」と意見を求められることが多かったといいます。
「これ、くさい部屋によく例えられるんですけど」
く、くさい部屋?
「部屋の異臭に一番気づくのは、新しくドアを開けて入ってくる人。のように、社員が当たり前だと思っていることや、社内では普通になっているけどおかしいことは、新しい人が一番感じるはずだ。という会長の言葉を聞いて、身に付いていたんだと思います。当時はありがたいと思いつつ、すごくプレッシャーでした(笑)。だけど今考えてみれば、すごくいい経験だったなと」
さらに、入社2年目の頃。にわかに社会問題となっていたのが、空いている社員寮の有効活用。そこで案として出てきたのが、当時流行りだしていたシェアハウスでした。
ターゲットは20代のひとり暮らしということで「私の年齢とも近いので、やってみるか?と言ってくださって。不安ではありましたが、やらせて欲しいと言いました」
そこで、まずはリサーチをしなければならないと、なんと瀧口さんは実際に(!)シェアハウス暮らしを体験。その時あった社員全員に送るメーリングリストで「シェアハウスの今」というタイトルの連載を書くことになったといいます。
「あんまり仕事っぽくないというか、けっこう他愛もない内容だったんですけど、反応があたたかくて。社内で声をかけてくださったり、返信をいただけたり。自分の業務だけに夢中になるのではなく、関係なくても誰かのレポートを見て気にかけてくれる、面白がってくれている感じがあって。それが励みになって、続けられました」
「会社の人」より
「仲間」のほうがしっくりきます。
現在は人事部として、社員それぞれの能力を高めるための組織風土づくりを担う瀧口さん。
「そうですね。これまで自分が感じてきたいい部分を伝えるだけじゃなくて、存続する立場でもあるので」
ただ入社した社員数は60人ほどだった当時から、今や260人と大幅に増えた今。それは、決してたやすいことではありません。
「フレンドリーな社風とか、顔の見える距離感とか、発信に対して反応する文化って、人数が増えると、どうしても薄れていきがちなので。これから入社する人にも知ってもらいたいですし、文化としても残していきたい。何より私自身が実感しているからこそ、なおそう思います」
それを証明するように、部署間をつなぐさまざまな取り組みを次々に実施。社員同士の仲の良さは、出色と言えるでしょう。
「『会社の人』と、ひとくくりにする言葉はあまり使いませんし、思いません。そもそも、そういう感覚はないですね。仲間、のほうがしっくりくるかもしれません」