入社早々いきなり会社批判!?
-チャンスの神様は前髪しかない-
彼女が好きな言葉だ。
「私、小さい頃バレエを習っていたんです。その当時先生に『役をやりたいのであれば、まずは私やれます!と手を挙げろ』って言われて。更に『やってみたい』みたいな曖昧な言い方ではなく、『やれます!』と言い切れ!と。やれるかどうかは、やってみて初めて周りに判断されると。今思うと、子どもに対して随分無茶言う先生ですよね。」
そう言いながら彼女は笑った。
ギリシャ神話のカイロスという神からきている言葉。
「好機はすぐに捉えなければ、後ろから捉える事はできない」という意味。
「シマダハウスに中途入社した当時は、おかしい事がいっぱいある会社だと思いました。」
え、いきなり会社批判ですか!?
「違いますよ! それってどの会社にも多かれ少なかれある事ですよね。
『履歴がデーターに残っていない』『スキームがマニュアル化されていない』
『仕事が属人化されている』私が前にいた会社がそうだったんです。」
以前勤めていた会社は営業が一から十まで全てをこなす会社だった。
でも、それってとても効率が悪い。
彼女はその一部を別の部隊に預けて、より営業が効率よく大きな仕事に専念できるような仕組みを作った。
その仕組みはマニュアル化され、彼女のいた営業所に留まらず全国に展開されたという。
「だから、入社した時思ったんです。あ、以前いた会社と同じ状況だって。」
シマダハウス入社時、賃貸管理業は初めての経験。
仕事をイチから覚えるため最初は営業から後方部門等、全ての部署を回っているなかで
気が付いたところを臆する事なく提言や指摘。いくつかの業務改善を行った。
そんな事を積み重ねていたら、
いつの間にか多くの人達が彼女に相談を持ち込むようになっていた。
明日から社長代理
入社して1年もたたないある会議の日
直近の問題点や業務改善報告が終わった後、おもむろにCEOから
「明日からシマダリファインパートナーズの社長代理だ」と告げられたという。
「驚きましたよ。普通、事前に偉い人の部屋に呼ばれて内示とかあるじゃないですか。
でも、まったくそういうの無し。会議に出席した人みんな驚いていましたけど、
私が一番驚きました。」
見ている人は見ているという事か。
シマダリファインパートナーズは賃貸管理部を支えるビルメンテナンス部門。
賃貸事業の中核を担う会社で、それでも当時は問題がいっぱい。
細かい事から大枠までひとつひとつを地道に改善し、標準化していった。
一番困ったのは「昔からそうだったよ」と言われること。
効率が悪いのはあきらかなのに、思考停止している人達が多い。
それでも、彼女はあきらめなかった。
「最終的には、どうにかなると思っていましたよ。社風も自由だったので何かに縛られた事もなく、提案したら『とりあえずやってみよう』とみんな言ってくれました」
才能は「あると思った」もの勝ち。
才能があるかないかなんて誰にもわからない。
だったら、あると思って行動した方が絶対プラスに働くはず。
小さい頃習ったバレエと一緒。
とりあえず手を挙げないと何も始まらない。
「3年くらいかかりましたね。」
思った通りに道を均すにはそれくらいの時間を要した。
その期間、肩書は「社長代理」から正式な「代表取締役社長」へ
会社は10億円規模の売上をあげるようになった。
二児の母でもある歌原さん。子どもたちもまだ小さい。
転職や社長就任に不安はなかったのだろうか。
「残業とか、休日出勤をしているわけではないですからね。
業務改善を提案している自分が遅くまで残って仕事をするなんておかしくないですか!?」
おっしゃる通り。
そうは言ったものの、当初からそんなにうまくいっていた訳ではない。
任された以上、結果を出すしかない。時間的に無理をせずにやりたい事ができるのが理想だけど、現実はそんなに甘くない。毎日仕事を持ち帰って情報の整理を深夜までやっていた事もあった。
二級建築士とインテリアコーディネイターの資格を持つ彼女は、オフィスにフリースペースを導入し、お洒落に改装。従業員に対しては会話を大切にした。
ここで一緒に頑張ればプロフェッショナルになれる!私たちが提供するのは、作業ではなく管理のプロの仕事だ。だから、待遇も改善する。環境も改善する。そんな事を話した。
会社の体制が変わり、離れていった人達もいるけれど、独立して取引先になったり、他の部署に異動となって活躍している人もいる。
そういった色々なプロセスを経て、今があるのだと。
地域の子どもに、
いい時間(とき)をとどけたい
彼女が今取り組んでいる活動が「子ども食堂」だ。
次代を担う子どもたちの成長のために、ボランティアとして運営を始めた。
「地域の子どもたちに、いい時間をとどけたい」との想いから
グループ創業の地、世田谷区千歳烏山で活動を展開している。
「うちの会社に昔からいる偉い人達って『シマダハウスは地元で知らない人はいない』くらいの勢いで話すんですよ。確かにその業界では有名だけど、地域としては案外知らない人も多くて。」
…大胆なご意見で。
「だからこそ歴史に寄りかからないで、地域への関りというか、そういったものを大切にして地元に根付いていく。それがきっと長いスパンで考えると会社に還ってくると思うんですよね。」
最初は参加人数も少なかったけど、回数を重ねるうちにどんどん規模が大きくなっていった。今では予約が必須くらいの盛況に。
グループの飲食部門の人達が調理を手伝い、地元の大家さんが野菜を提供と協力者もたくさんできた。
開催日の烏山事務所は、子どもの笑顔と笑い声であふれている。
最後にシマダグループへ入社の理由を聞くと
「自由度の高そうな印象だったので。実際そう感じる機会は多いです。今仕事をしている理由は、これからも挑戦したい事がたくさんあるから、ですかね。」
バレエの先生の話には続きがある。
『手を挙げないことには一生あなたの番にはならないのよ。だって世の中競争社会で、その役割をやりたい人はたくさんいるのだから。』
大人になった彼女はその言葉を胸に、今でも変わらず
チャンスの神様の前髪をつかもうとしている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
素敵なアクセサリーですね。インタビュー終了後、そう言うと
「好きなんです、この色」と微笑んだ。
その色はターコイズブルー。
明るい空や南国の海のような、開放的なイメージの色だ。
「知性」を表すブルーと「ハート」を表すグリーンの力が合わさり
想像力と表現力とコミュニケーションの色と言われている。
彼女の瞳の奥に、そんなターコイズブルーが見えたのは気のせいではないかもしれない。