2022.06.16

欲張っちゃ~いけない
僕がサーフィンから教わったこと

遠く離れていても、メールの文面だけでその温もり、いや、ちょっと熱すぎる人柄が伝わってくる。体育大ではラグビー部で寮住まい、趣味は登山、今はサーフィンにハマっている根っからのスポーツマン。入社3年経たずして、ホテル未経験から副支配人になった大山さんの人生を尋ねてみた。

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僕がサーフィンから教わったこと
Summary
  1. 生まれも育ちも神楽坂 実家を売り払い茅ケ崎へ
  2. 海が変えた人生
  3. トイレ200個を洗う毎日
  4. 「大山さんいます?」

生まれも育ちも神楽坂
実家を売り払い茅ケ崎へ

「行きつけの美容室で、副支配人っぽい髪型にしてくださいって言ったらこうなりました。」

と、よく焼けた肌に真っ白いシャツがよく似合う彼は、にっこり笑って話してくれた。3か月前長かった髪は、バッサリと切られていた。

その出で立ちから、てっきり湘南あたりの出身なのかなと思いきや、

「生まれも育ちも神楽坂。25年間住んでいました。」

と意外な答えが返ってくる。

 

28歳までの7年間は、大手スポーツメーカーで働いていたという。

アウトドア商品の販売を経て、25歳で新宿店の店長になった。

 

「とにかく会話をするのが楽しくて。あっという間に1~2時間、そうやって話し込んだお客様は、またお店に来てくれて。一度に、100万円も購入してくださった人もいます。」

 

店長なのに、“売ろう”だなんて、これっぽっちも思っていなかったという大山さん。

気が付けば、2年連続、“全国売り上げ№1”になっていた。

 

店長職では飽き足らず、次のキャリアとして選んだのは、カスタマーリレーション。

いわゆるお客様相談窓口。

「相談窓口といっても、そのほとんどはクレームで。電話に出ると開口一番『ふざけんなよ!』って言われることも多々ありました。」と、なんだか嬉しそうに話す。

疑問の表情を浮かべていただろう私を見て、

「いやぁ、どのクレームも本当にありがたくって。社長になり変わり、ありがとうございます!って、そう思って対応していました。」と。

 

この人は、身体だけでなく精神までもが強靭であることを悟った瞬間だった。

海が変えた人生

「31歳、結婚もしていないですし、彼女もいません。長く続かないんです。ある意味、我がままで、自分勝手に楽しみすぎちゃうから。」

 

そう話す大山さんの朝は早い。

4時起床、4時5分に海へ行く。

波がよければ、朝からサーフィンして仕事、波がなければ二度寝して仕事へ。

23時には寝る規則正しい毎日。

 

「サーフィンって、何年やってもうまくならないのが面白い。つい6年前までは、海とは無縁の生活でした。富士山専門のガイドをするほど、もともとは大の山好き。それが、ひょんなことから海に出会っちゃたんです。」

 

初めて同僚に海に連れて行ってもらってから、ザブ~ンと海にハマってしまい、気が付いたらサーファー道まっしぐら。両親を説得して、神楽坂の実家までも売り払い、茅ケ崎に移り住んでしまった。

なんと大それたことを。

それくらい、この出会いが彼の人生を大きく変えてしまったのだ。

「茅ケ崎に引越してからも、最初は新宿まで通っていたんです。でも、もっとサーフィンをしたい!と思うようになり、海まで徒歩3分の『葉山うみのホテル』のオープニング募集を見つけて応募しました。」

 

『葉山うみのホテル』の抜群の立地に惹かれ、ホテルマンとして新たな道を歩みだした。

 

トイレ200個を洗う毎日

しかし、進んだ道はそう平たんとはいかない。

「毎日トイレを200個洗わされました。いったい、いつになったら接客させてもらえるのだろう、と思う日々でした。」

ホテル業未経験の彼が真っ先に任された仕事は、清掃業務。たとえサービス志望であったとしても、すべての業務をこなせるように指導するのがシマダ流。そんな洗礼を、もれなく彼も受けたのです。

 

1か月清掃をし続け、ようやく接客できる!と思ったら、次はキッチン研修が待ち受けていた。3か月目で、いよいよ接客ができるかと思ったら、夏限定だった『葉山うみのホテル』のプレOPENはあっけなく終了。

 

その後も、大山さんの試練は続き、『箱根つたや旅館』のオープニングスタッフとして異動を命ぜられた。海が近いが故に入社したはずが、気が付けば、山へ籠ることに。念願のうみのホテルで接客できるようになったのは、なんと翌年の夏であった。

 

「日頃の行いがよくないと、いい波はこない。波を独り占めすれば、『調子乗ってんじゃね~』と人生の先輩方に怒られる。欲張っちゃいけない。意外とサーフィンってリスペクト精神と協調性が大切なんです」

サーフィンの話をする顔のなんと眩しいこと。

サーフィンのためなら、どんなに日常の試練があったとしても、彼には大した問題ではないのかもしれない。

「大山さんいます?」

うみのホテルで迎える3度目の夏を前に、大山さんは副支配人になった。

そんな彼を訪ねてくる地元の人は少なくない。

 

森戸に住んでいる70代のご夫妻もそのうちの一人で、コーヒーを飲みながら新聞を読んだり、書き物をしたり、いつも穏やかな時間を過ごしていくという。

ある日ご夫妻はカフェの紙ナプキンに、俳句をしたためた。

 

 

ここ森戸 歩いて遠いよ うみホテル

山みどり 顔は黒いよ 大山くん

 

「こんな句をプレゼントしてもらうなんて、ありがたいですよね。」

こちらのご夫妻、昨年末に帰省される娘さんのためにと、二部屋も予約をしてくださったそう。

大山さんはどんな接客をしているのだろうか。

「ただ、人の関心に関心があるだけなんです。接客ではなく、世間話を楽しんでいて、なぜこの人はうちに来てくれるのかな。そんなことを聞きたくて。」

自然体でさらりと教えてくれた。

 

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インタビューの終わりに、彼にちょっと意地悪な質問をしてみた。

うみのホテルから異動になったらどうします?

 

「うわ~~~~~~~っ、ぶっちゃけ考えます。」っと、天を見上げた。

 

しばらくして、

 

「自分が予期していない出会いで、今まで良き方向に向かってきた。

海では、何事も受け入れないとぶっ飛ばされます。協調性を持っていないとその海に入れなくなる。」

そう話す彼の顔に曇りはなかった。

今後、予期せぬ荒波が訪れたとしても、きっと彼なら器用に乗りこなしていくだろう。

 

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