2022.05.17

差し伸べたその手が誰かを支えられるように

電話は決して相手よりも先に切らないし、大皿にひとつ残った唐揚げは勧めがない限り手を付けない。右田さんの第一印象はそんな控えめで優しい感じ。気を配っているわけではないんですよ、とうつむき加減で笑いつつ、困っている人を放っておけずに奔走していたら介護を始めてたった半年で責任者になったという、筋金入りのお人よしだ。

シマ報 > 差し伸べたその手が誰かを支えられるように
Summary
  1. 祖母の地元で衝撃を受ける
  2. 自らの手でよりよい介護業界を
  3. 目の前の人が困らないように

祖母の地元で衝撃を受ける

 

 

右田さんはいわゆる鉄オタ。二十歳で旅行会社に就職し、忙しい毎日を送っていた。

(ちなみに1番好きな鉄道はのぞみ)

薄利多売でこなせどこなせど終わりが見えない状況の中、鹿児島の祖母が特別養護老人ホームに入居したと知った。

 

学生時代は毎年会いに行っていたのに、気づけば社会に出て12年が経っている。久しぶりに祖母の顔を見に行くことにした。

 

 

東京から鹿児島に降り立ち、そのホームに足を踏み入れた時の、排泄物が混じったような独特な匂い。

 

ショックを受けた。

 

人の手を借りないと生活ができなくなった祖母が住み慣れた鹿児島の地でようやく入れた老人ホーム。それなのに、いつも綺麗にしていた祖母がお世辞にも良いとは言えない環境で生きることを余儀なくされている。

 

何とかできないだろうか…!と心を痛めるここまでは誰にでもありそうなことだが、

おばあちゃんが困っている、それなら自分がこの状況を改善しよう!となるのが右田さんである。その熱意のまま初任者研修を受講。異業種への転職だったが、介護業界は成長産業だし、将来の安定性もある。

 

人に喜んでいただくために働く。根底は旅行も介護も変わらない、と思えば不安はなかった。おばあちゃんはその間に生涯を閉じ、右田さんは東京にある大手有料老人ホームに転職した。

 

 

自らの手でよりよい介護業界を

転職先の有料老人ホームで右田さんの熱意と優しさに打たれたのは、きっとご入居者だけではなかったのだろう。一緒に働く仲間の信頼を得て、転職して半年で責任者を担うことになる。

 

大手有料老人ホームの介護保険制度への考え方に疑問を感じ、もっとご入居者本位の介護がしたい!とシマダリビングパートナーズに転職してきた後はガーデンテラス砧公園の副施設長として勤務。

 

2021年2月にオープンしたばかりの新しい施設だ。特に桜の季節は5階の食堂から砧公園の満開の桜を一望することができる。

 

訪問介護事業所とデイサービスを併設しているので、右田さんはお一人お一人の状態やご希望に合わせて、何時にどのサービスを使うかオーダーメイドのケアを組み立て、健康的に過ごせるようなサポートとコントロールを行っている。

目の前の人が困らないように

 

祖母が入居していたあの老人ホームは今では教訓だ。

高齢のために今まで通りの生活が難しくなったとしても不自由なく暮らすためには。

根底にあるのはあの時と同じ、「困っている人を助けたい。」という想い。

 

 

職員に対してもその姿勢は崩さない。

何かでつまづいている人がいれば自分の仕事はともかく、つい体が動いてしまう。自分の仕事が終わっていないのにやり過ぎだよ、と上司が釘をさすほど。本人は「ごもっともなんですけど」と苦笑いする。

 

 

ケアが必要な人はこれからもどんどん増えていく。2025年問題はもう3年後の話だ。

今後ご入居される方々は戦後に生まれ、豊かになっていく日本と並走するように人生を渡り歩いてきた人々なのだから、好きなものも家族のあり方も、典型的な高齢者像よりバラエティ豊かになっていくのだろう。

 

疾患を抱えて今まで通りの生き方ができなくなっても、それでも目の前の方が「困らないように」と差し伸べる右田さんの手が、まさに豊かな時間と豊かな高齢社会を作っている。

謙遜するだろうから、本人には言わないでおいた。

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